今野敏が気になって読み出して以来7冊目、ついに吉川英治文学新人賞受賞作「隠蔽捜査」にたどり着きました。
いいですこれ、ジミです。銃弾の一発も発射されません。格闘もロケットランチャーも荒れた海原も氷原もバイオ兵器も出てきませんし、舞台はもっぱら警察庁や所轄署の中と家庭だけです。おまけに主人公はバリバリのエリート、東大卒です。キャリアくずれ(新宿鮫とか)でもありません。普通この手の小説では嫌われる立場として描かれる現場に出ないキャリア組、筋金入りのカタブツで鼻持ちならないヤツでもあります。小説の出だしでは、まさかコイツが主人公じゃないよな!と思いました。しかし、イイんです、このお話。孤独なオトコの葛藤・戦い・変容なのです。そして友情と家族のお話でもあり、ラストは清々しささえ漂います(ちょっと出来過ぎか?)。もう、まちがいなく続編が面白そうな伏線も読めます。新しいタイプの警察小説、吉川英治文学賞はダテじゃないっす。
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